<レポートに記載されている数字>
ダイヤモンド・グレーディングレポートには、ダイヤモンドの4C(カラット、カラー、クラリティー、カット)の他にも言葉であるとか数字などが記載されています。ダイヤモンドのグレードさえ確認すれば以外にも気にもとめないのが現状ではないでしょうか。
では、ダイヤモンド・グレーディングレポートに記載されている言葉と数字にスポットを当て、その言葉と見方を説明しながらお話を進めたいと思います。
もし、レポートをお持ちでしたら、是非広げて一度見て頂けたらと思います。
そこには次のような項目がありませんか?
(1)寸法(直径)
(2)深さ(全体深さ:高さ)
(3)テーブル直径(コーナー~コーナーの寸法)
(4)パビリオン深さ
(5)ガードル厚さ
レポートは鑑定期間により多少レイアウトは異なりますが、いま述べた(1)~(5)の内容は必ず記載されています。
次にこれらの項目を順に説明します。
(1)寸法&(2)深さ
小数点第2位まで記載された数字が3つ並んでいるのが、寸法明記した項目です。例えば「6.48×6.50×3.90」とあれば最初の2つの数字、ここでは「6.48」と「6.50」です。この数字はダイヤモンドの直径のサイズを「ミリ」で表しています。ラウンド・ブリリアント・カットのシェイプ(輪郭)は、ラウンドでどの方向から測定しても同じだと思いがちですが実際には多少の大小はあります。ただ大事なのは肉眼で見て、ラウンドかオフラウンドかという事がポイントで、オフラウンドであればカットが悪いという事で、価格的にはあまり高い評価はなされません。ダイヤモンドの直径を計るのには、ノギス又はレバリッジゲージ(写真)を用います。
測定方法は、ベセルのコーナーからコーナーとアッパーガードルとアッパーガードルのラインの合計8方向測定し、その最大値と最小値を記載しています。
この最大値と最小値の平均が、このダイヤモンドの直径の平均となります。
さて「寸法」の項目で3つ数字があり、今まで2つを説明しました。最後に書かれた数字は、ダイヤモンド深さを「ミリ」表示したものです。すなわち「寸法」の項目ダイヤモンド実寸を「最小直径・最大直径・深さ」に順で「ミリ」表示で記載しています。単にそれだけの事か、と思ってしまえばそれまでですが、ここで見抜けないといけないポイントが隠されています。
まず1つめは前にも述べましたが最大直径と最小直径の差があまりないとき事が望ましいと言う事です。2つ目は、Ct(カラット)によりそれぞれ理想的な直径がある事です。
例えば、1Ctのダイヤヤモンドであれば平均直径は6.5mm前後が理想です。もし、1Ctで直径が6.0mm以下だと、見た目が小さく輝き方も望ましいとは言えないと思います。この様なダイヤモンドは価格的には、やはり低くされがちです。深さの「ミリ数」は直径の約60%が理想だとされています。
1Ctダイヤモンドを例にとってみますと、6.5×0.6が理想的な深さで約3.9mmという数字になります。では、ここで少し実技編に入ってみます。
お手持ちのダイヤモンド・グレーディングレポートにはどの様な数字(寸法)が記載されていますか。確認できましたら、次の式にはめてみて下さい。
(平均直径の2乗)×深さ×0.0061
または
(平均直径の3乗)×0.00365
どうですか?電卓でうまくはじきだせましたか?
出た答えは、そのダイヤモンドの理想的な重量です。レポートに記載されている重量の+-5%なら問題はないと思います。
もし大きくずれていたらカットの評価のどこかが良くないと思います。
<カット評価について>
カット評価は5段階でエクセレント、ベリーグッド、グッド、フェアー、プアー、となっています。問題なのは、グッドのランクです。というのも非常にグッドの範囲が広いからです。ベリーグッドに近いグッドもあればフェアーに近いグッドもあります。ダイヤモンドをみないでレポートの4Cに頼っているプロは、どちらのグッドか評価でいないのが実情です。同じ価格なら、私はベリーグッドに近いグッドのダイヤモンドを手に入れます。
今述べた公式はその一つの目安となりますので、是非覚えてください。
又、ダイヤモンドの重量はルース(裸石)の状態でしか測定できませんが枠にセットされたダイヤモンドでもサイズを測定する事が可能であれば、先程の式を用いて推定重量を求める事ができます。これは、どんな時に必要かと申しますと、枠に刻印された重量が正しいかどうかの判断すなわちダイヤモンドを入れ替えていないか、もしくは故意に重量を変えて刻印していないか、などという時に確認するのに非常に便利です。
質屋さんは、特にこの様な事に注意を払っています。
すべてのものにいえる事かもしれませんが、書かれたもの、言われた事を単に鵜呑みにはせず、そのことを参考程度におさめ、最後は自分でそのもの自体を確認するという事が大切なのです。
単に、「寸法」という項目だけの説明に終わりましたが、その一行が物語っているものは、ただダイヤモンドの測定しか書かれていないと思うか、又はその記載された数字をどの様に分析し、どう理解するかというお話です。
<ダイヤモンドの数字>
ダイヤモンド・グレーディングレポートに記載されている言葉と数字について5つの項目があることを述べ、主に「寸法」について話を進め「深さ」の事まで話が進んだと思います。
ご理解いただけましたでしょうか?では、残りの「テーブル直径」「パビリオン深さ」「ガードル厚さ」についてお話します。ただ少し思い出して頂きたい事があります。
「寸法」の数字は実寸(mm)で表示しており、後の項目は「ガードル厚さ」を除いてはパーセントで表示しています。
これは、ダイヤモンドの直径(外周)を100%とした場合の割合である事を、まず頭に入れておいてください。これが理解できれば準備OKです。
テーブルの直径
テーブルとはラウンド・ブリリアント・カットを正面で見た時中心にある一番大きな面の名称です。ダイヤモンドに入ってきた光が内部で反射し観察者の目に返ってくる役目を果たしている面です。従ってダイヤモンドを美しく見せるためにはとても重要な面であると言えます。ならば、大きければ大きいほど白色光が観察者に美しく見せる事が出来るではないかと思いがちですが、そうではありません。
ダイヤモンドの美しさには3つあるとお話した通り、テーブル面が大きくなればそれに反してテーブル面を取り囲んでいるファセット面(スターファセット、ベゼルファセット、アッパーガードルファセット)が少なくなり、虹色に輝くダイヤモンドの美しさ、ディスパージョンが失われます。テーブル面は、大きくもなく小さくもなくすべての美しさを引き出す上で重要という事になります。では、ダイヤモンドの直径に対してどのくらいが適当かといいますと表1に示すように53%~58%が最も適切だと協会では述べています。
しかし、あまり神経質に考えない方が良いと思います。
グレーダーは実測した数値を記載し表1に示すグレード付けをしているに過ぎないからです。
そこには基準というものが存在するだけで美しさは測定出来ていません。肉眼で58%と59%のテーブルを比べてもなんら変わりはないでしょう。
まして、メジャーのちょっとした誤差によっても変わってしまうぐらいのものなのですから。59%のテーブルで価格が安くなるものであれば、そちらの方がある意味では得なダイヤモンドの買い方かも知れません。ただ一ついえることは光の反射と虹色の輝きがバランスよく美しいかどうか自分の眼で確かめる事が良いと思います。
パビリオンの深さ
テーブルのパーセントは他の面とのバランスが大切とお話しましたがパビリオンの深さ(図1参照)に限っては断定します。
表1ではGoodの条件は41%~7%となっていますが、47%ぐらいになるとダイヤモンドを見た時、テーブルの中心が光らなくなり暗っぽく感じると思います。
ベストは43%~44%位を覚えておいてください。それより前後すると他の面の影響を受けやすく、例えば「パビリオンの深さ」が41%の場合テーブルが68%にもなるとやはりカットグレードがGoodの範囲でも光り方があまり美しいとは言い難くなります。
パビリオンの深さは、ダイヤモンドに入ってきた光が上手く反射し、観察者の目に光を戻すかどうかを左右するほどであるため、ここの数字はこだわりたいものがあります。
ガードルの厚さ
このページの最初の図をみてください。
カットの外周になる部分をガードル部といいます。
ガードルとは、これまで述べたダイヤモンドの面とは違い、単なるダイヤモンドの外周です。この部分は、細かい面にカットをほどこしているダイヤモンドもありますが、ほとんどの場合はすりガラス状にしてあります。
美しさを持続するためには必要な部分であると言えます。
なぜならガードル部分が薄すぎると欠けてしまう恐れがあるからです。
ダイアヤンドを枠にセットする場合、石を留める爪の部分がガードル部分にかかります。
そのとき薄いガードルですと、いくらダイヤモンドといえども欠けてしまう恐れがあるからです。
その時は、もちろんクラリティーグレードのランクは下がります。
ナイフのエッジのように鋭くとがったガードルは危険な美しさといえるかもしれません。
では、極端に厚いガードルが良いかといいますと、これもまた困った問題が生じます。
なぜなら、枠にセットしたとき見た目に悪い石の留め方になってしまったり、ガードル部分が汚れたりすると美しさという点から考えてもベストとは言えなくなるでしょう。
また、一番大きな問題はガードル部が厚ければ厚いほどダイヤモンドに無駄な重量が増えてしまいます。これは何を意味するかというとカラット数が大きいものを買ったはずなのに、見た目は小さいダイヤモンドになってしまうという事です。言ってみればカットする人が美しさを追及するプロポーションより、一般の人が分かりやすい重量にウエイトを置いたというカットです。
こういうカットはダイヤモンドをサイドからみた場合ダイヤモンドの中心にハチマキを巻いている様に見えますのですぐに気がつくと思います。
<まとめ>
テーブルの大きさは60%ぐらいの基準で考え、美しさのバランスのよいものを選びパビリオン深さは42%~45%ぐらいのものを出来れば43%前後にこだわりガードルはダイヤモンドをサイドからみて、ガードルが白いラインに見えるような感じのものがお勧めです。
後は全体のバランスを表1で確認し、なるべく予算内で納得するものを選べば良いでしょう。ただ、ガードルの表示は「極端に薄い」とか、「極端に厚い」というものは避けた方が良いのは、今までの説明でご理解いただけると思います。
ガードル部の表示は外周部分の「一番薄い所」と「一番厚い所」を記載します。従って「極端に薄い~極端に厚い」と表示があれば外周のガードル部分が厚くなったり薄くなったりしているということで外周部分が波打っているというのが読み取れます。
このタイプのダイヤモンドな場合はより安価になっている為、ファッション感覚で使用される場合が多いように見受けられます。
いずれにせよ波打っているダイヤモンドより、宝石販売員の説明にひざを打つ宝石に対する知識とアドバイスが一番だと思います。