<ジルコン>
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「風信子」。。。
なんとなく心地よい文字だと思いませんか?
この文字を読める方は少ないのではないのでしょうか?
ちなみに中国語でfengxinziと発音します。
なんとなく発音から分かりますか?
これは日本ではヒヤシンスと読みます。

この心地よい発音の「風信子」に「石」をつけると「風信子石」となります。宝石業界では「ジルコン」という宝石を意味します。「ジルコン」の日本名は「風信子石」です。

<風 信子さん>

初めてこの『名前』に出会ったときはホント。。。
“かぜ のぶこさん”かと、思いました。
そんな信子さんに出会ってはや?十年経ち今ではホント惚れています

どこに惚れたかって?

人間らしいのですよ

あッ そうそう 信子さんの本名はファンシンスーさんこと『ヒヤシンスさん』です。
宝石名は『ジルコン』っていいます。

えッ キュービック・ジルコニアじゃ~ないですよ。
『ジルコン』はりっぱな天然石ですから!!

んッ どこが人間らしいかって ジルコンって『無色』とか『青色』を思い浮かべるでしょう!
でも実際は、無色、青色、黄色、褐色、赤色、緑色って長い年月の間に結晶構造が壊れて色がかわっていくのです。
これを『メタミクト化』『メタミクト現象』といいます。

人も時が経てばお肌のメタミクト化するところが。。。納得なのです。
このように全ての『宝石は永遠』ではなくて人間らしい宝石もあるわけですよ。
では、もう一つも事実を。。。
よく目にする『青色ジルコン』は熱処理されています。
これがいけないのではなくて、ここが大事!!
つまり、熱くなると青色に変化します。
と、いうことは『熱くなればいいんだ!!

わたしたちも熱くなって青くなりましょうか!!
熱くなればなんどでも『青春!!』なのかな?

<ジルコンとキュービック・ジルコニア>
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ジルコンはれっきとした天然宝石。一般的にはジルコンにはダイヤモンドの模造石とかニセモノというイメージがありますが、れっきとした「天然宝石」です。勘違いされている方が多いようですが、それはダイヤモンドの模造石として人工的に造られたキュービック・ジルコニア(写真)と混同しているからかもしれません。持ち込まれた宝石がジルコンで、鑑定依頼の方に「天然ジルコン」と告げると偽物かと残念がられました。

ジルコンをイヤモンドと言って販売すれば、偽物という考え方は成り立ちますが。。。
「ジルコン」と言っただけで、ショックをうけてしまうのでは、あまりにもこの天然宝石である「ジルコン」が可哀想な気がします。ジルコンは46億年前地球が誕生した後、10~億年経って誕生した立派な歴史を持つ「天然宝石」なのですから。
(依頼の方はジルコンを人工石だと思っていたそうです)
このようにジルコンは天然宝石であるにも関わらず誤解されている方が多いようなので、「ジルコン」の名誉のためジルコンについてお話したいと思います。

天然宝石ジルコン

現在、市場で多く出回っているダイヤモンドの模造石として、キュービック・ジルコニアがあります。
(人工石モアッサナイトも話題をよびましたが・・・)
今ではこの人工キュービック・ジルコニアが一見ダイヤモンドに一番良く似ており、価格も低価格で安定しているため他のダイヤモンドの模造石は影を潜めています。

キュービック・ジルコニアとジルコンの見分け方

さて、このキュービック・ジルコニアですが化学組成はZrO2です。今回の主役であるジルコンはZrSiO2、即ちジルコニウムの珪酸塩であることが、化学組成からお分かりいただけると思います。名前も似ているし、ZrO2とSiの化合物がジルコンですから、混同するのも無理はないかもしれません。
ごく簡単にこの二つを見分ける方法はその宝石を通して文字か何か見てみるとジルコンは二重にダブってみえます。これはキュービック・ジルコニアが単屈折に対して、ジルコンは複屈折という特性の違いからなる現象です。

ダブリングについて
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写真を見てください。これは最も分かりやすい複屈折の現象で、物が二重になっていることが分かります。このような現象をダブリング(二重像現象といいます)
例えばダイヤモンドやキュービック・ジルコニアにはこのようなことは起こりません。

写真はカルサイトという鉱物です。但しメタミクト化されたロータイプのジルコンは二重象は確認できません。ダブリングが顕著な宝石では内包物が二重に見えたりします。顕著な身近な宝石としてペリドットがあります。

では次にジルコンの本質に迫ってみたいと思います。

宝石に割れはあってはならないもので、割れはとても嫌われます。私も確かにそう思いますが、ことジルコンに関しては例外です。私個人のまったく変な考えですが、今まで述べたジルコンの特徴を知れば理解してくれる人も多いと思います。
というのもジルコンは年代が経てば立つほど内部が破壊されていきます。
(この現象をメタミクト現象といいます 複屈折のハイ・タイプのジルコンがメタミクト現象により非晶質になります)
従って緑系のジルコンはその最たるものです。顕微鏡を覗くとその破壊により内部に面白い形の割れが生じています。山形マークあり、鱗片状ありです。ジルコンの山形マークの割れは、宝石の鑑定を勉強したことがある人なら、必ず教わる特徴ですが、実際にはなかなか遭遇しません。私はそのようなジルコンに出会った時、嬉しく思い地球の歴史を見ているような気になったりします。まだまだ話はつきませんがジルコンの名誉回復のために、ご理解いただいたでしょうか?
人には名前負けと言う冗談めいた言い方がありますが、ジルコンはさしずめその逆のような気がします。

風信子と言う心地よい発音を持ったこの宝石は

名前の風信子のごとく。。。
そんな事どこ吹く風と
地球の歴史に時を刻んでいるのかもしれません。

リンク : ジルコンの価格