ヒスイ似の鑑別方法と手順
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知人から宝石の鑑別依頼をうけました。見た感じはヒスイのペンダント(写真)です。しかも透明感のある綺麗な色合いです。受け取ってすぐにルーペで覗きました。肉眼である程度確認した後、やはり最初に覗くのはルーペが一番です。肉眼で気になった箇所をもう一度よく確かめます。
ヒスイにしては組織が変だとすぐに気がつきました。


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さらに
『はは~ん』
少し影になってみえませんが『18KGP』と刻印してあります。
この刻印の意味はメッキです。


この依頼された宝石はだいたいの鑑別予想がつきました。しかし、結果をより確実にするためにその確認作業に進みます。
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最初は拡大検査です。ズーム式の宝石顕微鏡で確認します。ズーム式が宝石の鑑別にとってとても便利なのは、気になった箇所を見ながらの拡大が可能だからです。
また、宝石を習いたてのころは結果を早く知りたいために屈折率を先に調べる人がいますがなるべくなら拡大での確認をお勧めします。屈折液に浸けてもよい宝石なのか、また石はセンター石のサイド石もちゃんと留まっているのか、あるのかなどの確認を怠るといけないからです。もし色々な検査をした後サイド石がなくなっていた場合後の祭りだからです。
検査する宝石(ジュエリー)の情報を知ることが大切です。


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偏光器を使って偏光器テストです。偏光器テストでは単屈折の宝石なのか、複屈折の宝石なのかガラス質なのか、また小さな複屈折の宝石が集まった特徴の宝石なのかがわかります。

この預かった宝石は思った通りのAGG反応です。AGG反応の結果から小さな複屈折の宝石が集まった宝石であることがわかります。
このような宝石はヒスイ、メノウなどによく見られる検査結果です。


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続いて屈折率を測定します。結果は約1.54でした。ヒスイの屈折率は約1.66ですからそれだけでヒスイでないことがわかります。
ちなみに屈折計は1.3~1.8のメモリがあります。屈折を測るときに屈折液を用いるのですが、その液体の屈折率が1.78のためメモリが1.3~1.8ありますので、1.78までの屈折率を計ることしかできません。


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依頼された宝石の最後の確認です。分光器を使っての検査です。この検査で『染色している』ことがわかりました。このような非破壊検査の確認で導き出せた答えは、染色クォーツアイトです。

ヒスイ風の宝石としてよく用いられている模造石です。専門用語をところどころつかってしまい少し理解しにくいところのがあったと思いますが、宝石鑑別機関で通常の宝石に対して行っている宝石鑑別工程です。
なんとなく『ふ~ん そうなんや そんな風にして宝石を鑑別するのか』
と思っていただければそれだけで記載してよかったと思います。