<エメラルド(5月の誕生石)>
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エメラルドは古代より『不老、不滅、精神浄化のパワーを持ち、幸福、幸運をもたらし、さらに貞操を守る宝石』とされていました。かの有名なクレオパトラはエメラルドを溺愛するあまりエメラルド鉱山を所有していたほどです。このエジプト鉱山は今では廃坑となっています。現在の主要産地としてはコロンビア、ブラジル、ロシアなどがあげられます。現代のストレス解消法の一つに森林浴がありますが、古代ローマ人は仕事机の上にエメラルドを置いて疲れを癒していたとか、また皇帝ネロはサングラスの代わりにエメラルドを使ったなどといわれています。森の緑が目を癒してくれるように、エメラルドは私達をリフレッシュしてくれる宝石なのです。

オイル処理

エメラルドのオイル処理については宝石を友にする方には、是非知っておいて頂きたい項目です。業界のなかには知らなくても良い事実もあるのではないか?という意見もありますが、全体としては情報開示の方向に向かっています。私は本当の事を知っていただいてこそ付き合い方があるのだと思っています。なぜなら知らなかったでは済まされないトラブルがプロの間でも起こっているからです。
欠点も知った上でやさしく付き合って頂けたらと思い、エメラルドのオイル処理についてお話をしたいと思いますます。

熱水鉱床産のコロンビアのエメラルドは、多くの液体包有物を含んでいます。そのため宝石としての重要なカットすると液体包有物が抜け出し、代わりに空気が入り液体包有物がフィッシャー(亀裂)となり目立ってしまいます。フィッシャーの存在は光の透過を遮ってしまい透明感がなくなってしまいます。その光の遮りをなくすために、通常エメレルドには処理が施されています。フィッシャーにオイルを入れる処理をするのです。なぜオイルを入れるかというと、エメラルドに近い屈折率をオイルは持っているからです。

e_014例えば空気中に氷があれば氷ははっきり形がわかりますが、その氷を水の中に入れたらどうでしょう。空気中より見えにくくなってしまいませんか。それは屈折率が関係しているからです。空気の屈折率1に対して、氷は1.309~1.313また水は1.33ですから、氷の形は空気中より水の中の方が確認しづらくなるのです。エメラルドも同じことが言えます。

フィッシャーに空気が入っているよりオイルが入っている方が、目立たなくなるのはそのためです。しかし、いくら日常的にやっている処理といっても覚えておかなければならないことがあります。
オリーブオイル、サラダオイルはいつかエメラルドから抜け出てしまい温度によっては白濁することもあります。またよく用いられているセダーオイルは紫外線で変色(茶色)してしまいます。これは、テンプラ油を長時間光にさらしておくと、やがて油が茶色に変色してくるのと同じ理由だと思えばわかり易いと思います。また、天然のオイルでパームオイルというものも使用されていますが、実際にはエポキシ樹脂(合成樹脂)を使用しているのがほとんどです。高品質のエメラルドを除き処理により宝石としての価値がよみがえるエメラルドには、エメラルドの生成条件を考えると処理というより、むしろ手当てをする処置と考えたほうがエメラルドとやさしく長く付き合える考え方のような気がします。

お取り扱い

エメラルドはデリケートな宝石なので愛情のこもった取り扱いを心掛けましょう。ガラスや机の角にぶつけない、炊事、洗濯など家事の時は外す、これは原則です。ご使用後は柔らかい布でそっとから拭きして下さい。決して洗剤などを使わないようにしましょう。