張り合わせ石とは
模造石のなかでも面白い模造石はこの『張り合わせ石』ではないでしょうか。駆り合わせ石とは、2つ以上の天然石又はイミテーションを組み合わせ、接着している“宝石？”のことです。その目的は高価な天然宝石に似せることにあります。従って、故意に作ろうと思えばその組み合わせは無限にありますが、その目的に沿った代表的な『張り合わせ石』はある程度限られてきます。
張り合わせ石には、2つの素材からなる『ダブレット』3つの素材からなる『トリプレット』があります。もちろんその組み合わせは『模造石』本来の目的に沿った組み合わせです。その組み合わせには、それぞれそれなりのこだわりと理由があります。ですから、張り合わせ石を見ながら何故その組み合わせなのかを考えるのも勉強になります。
張り合わせ石の組み合わせ
A.クラウンとパビリオン（トップとベース）の接合はダブレット
- 同種の天然宝石の素材の接着は『本ダブレットor真正ダブレット』
- トップに天然宝石、ベースに合成宝石orイミテーションの接着は『セミ本ダブレットorセミ真正ダブレット』
- トップに無色の天然宝石ベースに着色ガラスの接着は『偽造ダブレット』トップもベースも着色ガラスの接着は『イミテーション・ダブレット』
この場合は、接着剤が着色されているものが多いようです。写真(右上）は、ボールダーオパールに似せた張り合わせ（ダブレット・オパール）です。本当のボールダー・オパールは褐鉄鉱が母岩のプレシャス・オパールの事です。
B.３つの素材を組み合わせて接着している張り合わせは『トリプレット』
写真はオパールのトリプレットです。ブラック・オパールに見えますが反対にするとはっきりとわかります。本当の オパールの部分は、真ん中にサンドイッチされた薄いオパールだけです。
張り合わせ石のまとめ
それは天然宝石の硬度が高いのをうまく利用しています。よく触れ合う部分がガラス素材であれば磨耗に耐えられませんが硬度が高い天然宝石なら磨耗しにくいためです。よくある例は、『オパール・トリプレット』です。
オパール・トリプレットは遊色効果を持った薄いオパールを使用している関係で強度的に大きな問題があります。そのため、トップに無色の合成スピネルorクォーツを用いてその欠点を補っています。
このように『張り合わせ宝石』は小さな薄片からより大きな宝石に加工する目的だけでなく強度を増し、宝石の色や外観の改良の目的のためにも作っているものもあります。
張り合わせ宝石は加工された模造宝石ですが、模造なりにその宝石の美しさと耐久性を追及しています。
もちろん、高価な宝石として出回ってはいけませんが、安心して付けられる高価な代用宝石として認知されるようになってほしいと思います。
では、それぞれの張り合わせ宝石を解説していきましょう！！
＜ルビー風張り合わせ石＞
左の写真が普通にこのルースを見ている様子です。 でも少し傾けると反射しなくなるクラウンの部分が無色にねっているのが確認できます。（写真右） パビリオン部分は赤色です。 さらに無色と赤色部分の境目に黒いラインがあるのがわかります。 これが接着剤の箇所です。 ではなぜこんな面倒くさい模造石を作るのでしょう？ そこにはこのような思惑があります。
パビリオン部分は『ガラス』で、クラウン部分は『天然サファイア』です。 クラウン部分の天然サファイアのかすかな色は反射の影響で打ち消されてガラスの色になってしまいます。ましてや上から宝石を見るのですからなおさらです。クラウン部分の『天然サファイア』のインクルージョンも確認でき、屈折率もコランダムの屈折率です
そんなわけですから『天然ルビー』になりきれます
＜ボルダー・オパール風張り合わせ＞
写真の張り合わせオパールはダブレットのオパールです。 上部に天然ホワイトオパール下部に褐鉄鉱を張り合わせています。 横から見ればすぐに確認できますから見極めるのは簡単そうですが 枠にセットされフチが地金で隠れていれば以外に困難です。 このようなタイプの張り合わせ石は透明石のように内部が確認できないため さらにやっかいです。
＜ボルダー・オパール風張り合わせ（上級）＞
右の写真のボルダーオパールは本当の母岩が付いたボルダーオパールのように見えますが、右の写真の母岩の部分をよく見てください。
わかりますか？
母岩の色が上下で少し違う事が･･･
オパールのすぐ下の母岩に見えるのは 母岩ではなくて母岩に見える母岩色の接着剤です。下部の黒っぽい部分が褐鉄鉱です。先程の張り合わせオパールのように接着部が直線でないから少しやっかいです。
わかりやすいように拡大にしてみました。これでどうでしょうか？
母岩の色が違っていることが確認できたでしょうか？
そうです！！
と言うことは鑑別の結果は
上部：天然オパール
中部：褐鉄鉱色の接着剤
下部：褐鉄鉱
鑑別結果（備考） ： 【張り合わせを認む】 となります。
綺麗さは変わりませんが価格は違います。価格が優先か、こだわるか、よく確認してから そのへんをよく考えて付き合いましょう。
ここまで拡大すればなんとなくわかりますか？
技能賞クラスの張り合わせボルダーオパールでした。
これからは 皆さんも見破ってくださいね
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