アンモライト
アンモナイトがこの地球上に栄華を誇っていたのは、今からおよそ2億年前のジュラ紀という時代です。長い間地球に君臨していたアンモナイトも白亜紀後期の約6500万年前に絶滅のときを迎え、地球の奥深く抱かれ、深く永い眠りに入りました。
現在、アンモナイトは化石として地球のいたるところで発見されています。しかし、ただ一ヶ所だけには全く違った形で発見されました。
カナダのアルバータ州南部で発見された。アンモナイトの化石は虹色の光る化石だったのです。人々はこの奇跡の化石をアンモライトと名づけ、宝石として現代によみがえらせました。
虹色に輝くこの不思議な化石は、 やがて宝石として著名なジェモロジストの論文によって発表されるようになりました。
(1980年:グベリン、1981年:ワイト、1986年:ボウ)
1981年、国際貴金属宝飾品連盟(CIBJO)の色石委員会は、この虹色に輝くアンモナイトの化石をアンモライトと呼び、宝石として位置付けました。現在ではカナダのアルバーター州だけでしか産出されておらず、貴重な資源(宝石)といえるでしょう。
写真(上):一般的なアンモナイト化石
写真(下):アルバータ州のアンモライト化石
素材
アンモライトの素材は、三つの種類があります。
ソリッド・タイプ
一つ目は、天然アンモライトから固定処置(stabilized)をした後、カットだけを施したアンモライトをいいます。通常は強化目的のために裏面に母岩をつけたままカットします。しかし、まれにアンモライト層が厚く必要な厚みが得られる場合は、両面がアンモライト層となります。(写真) 両面で輝きを放つアンモライトは貴重な一品といえます。
母岩による補強タイプ(ダブレット)
二つ目は、ダブレットと呼ばれるもので、美しい光を放つアンモライト層がありながら、十分な母岩が得られなかった素材を生かすために、
他の母岩をアンモライト層の下部に補強したタイプを言います(写真)。
ソリッド・タイプと補強タイプは製品(ジュエリー)になれば、表面からは同じアンモライト層で覆われているため、区別はつきません。ソリッド・タイプと補強タイプは、ジュエリーになればその違いを見極めるのは、顕微鏡を用いても容易ではありません。製品になる前のルースの状態のみ違いの判別が可能ですが、熟練したものが確認しないと判別は困難です。
他物質による補強タイプ
三つ目は、主にアクセサリーによく用いられる素材で、採掘されたアンモライト層があまりにも薄いために母岩だけの補強では製品化が困難なため、上部に透明素材(水晶・合成スピネルなど)、下部にも別素材を張り合わせ日常の使用に耐えられるように工夫している素材のタイプを言います。
上下に補強を施しているため、本当のアンモライトはごく僅かに中心に確認できる程度です。
このタイプはアクセサリー用としてよく用いられています。写真の『トリプレットのアンモライト』は本来上部にある透明部分の合成スピネルをわかりやすくするために逆さまにして写真を撮っています。アンモライト層の部分はほとんど確認出来ません。
アンモライトジュエリーは、地球の歴史を物語る限られた素材であるために用途に応じてこれら三つの素材を有効に活かしたアンモライトジュエリーがデザイナーにより創作されています。
アンモライト(フラッシュ・パターン)
向きを変えると色が変わるアンモライトがあります。このタイプを『フラッシュ・パターン』といいます。自分が見ているアンモライトと向えからアンモライトを見ているお友達と全く同時に同じものを見ているのですが、違う色を見ているわけです。立場が変われば考え方も違うってことです。お取り扱い
アンモライトは、宝石のなかでは硬度が低く真珠と同じぐらいの硬度を持つ繊細な宝石です。そのために製品(ジュエリー)としての耐久性の向上、保護目的などの必要性から樹脂含浸の処置を施しています。この処置によりジュエリーとしての使用には支障はきたしませんが、
アンモライトの表面は真珠と同じ成分のアラゴナイト層で形成されている為、なるべく衝撃を与える様な手荒な取り扱いは勿論、超音波洗浄器などの使用も控えて下さい。
- 硬度の高い宝石と一緒に保管しないで、専用ケースにしまって下さい。
- 普段使いはなるべく避け衝撃を与えるような使用はしないで下さい。
- 超音波洗浄器などの使用も控えて下さい。
- 水に浸したり、温泉での使用は、避けてください。
写真は乾燥により割れてしまったアンモライトの処置前と処置後です。樹脂を含浸することにより強化することが出来ます。写真のような状態の場合はなるべく早くアンモライト専門のお店にお問い合わせ下さい。
程度によりますが、約10,000円~の処置費になると思います。